昔、学生プロレスをやっていました。
もともと、イチビリ(調子乗り)が集まって
ハプニング的に立ち上げたその団体には、
インチキな覆面レスラーがいて、邪悪な悪役がいて、
セーラー服や水着で戦う女子部門があって、
亀甲縛りの男がヌルヌル戦うオカマプロレスがあって、
凶暴な着ぐるみがいて…
今思うと、僕たちは「プロレス」どころか
「学生プロレス」としてのクオリティにすら達していなかった、と
断言できるのだけれど、ワーワー言いながら続けていたら、
最終的にその団体は「体育館のメインの出し物として企画したい」と
学園祭の実行委員会から声が掛かるほどに
成長(?)していたのでした。
でも、そんな「おとぎの国」も
最後は後味悪くフェードアウトしていきました。
最後の舞台は学園祭対決のメイン。
「マジ腕力」で旧世代を倒してやろうと意気込む新世代と
「体でボケて体でツッ込む ” アドリブのセッション ” 」を
芸風としていた自分たちとの対決が思わぬ方向に発展し、
旗揚げ以来最悪の「しょっぱくて切ない試合」となったのでした。
(あぁ、こういう時は精神的ダメージが大きいんだなぁ…)と、
みんながちょっとずつトラウマを分け合ってすべてが終了。
それが僕らの最終回でした。
ま、今思うと誰も悪くなかった…と思う。
悪いのはその場にいた全員の「若さ」と「青臭さ」…ってヤツかなぁ…。
★ ★ ★
時代は移って、昨年夏の話。
「学生プロレスの映画のマスクを作ってもらえませんか?」との
打診がありました。
これは是非やりたい…と心の底から思いました。
自分が知っている、何の役にも立たない知識と
あまり役に立たない技術(笑)。
そして、思い出すたび楽しさと恥ずかしさで
チクチクする想い。
そのすべてをこの仕事に投入しようと思いました。
そうして「ガチ☆ボーイ」という映画に
キャラクターデザインとマスクの制作という形で
参加させて頂く事になりました。
★ ★ ★
そして映画は完成。12月、試写会。
完成した映画を観終わったあと、
なんて言うか、ここでようやく自分の中の
「学生プロレス」というものの最終回を
迎えられたような気持ちになりました。
そうか… あの日は最終回では無かったのか。
確かに「上げたら落として」「落としたら上げて」の
ハッピーエンド、ってのが、
あの頃の自分たちのスタイルだったからなぁ…。
|
「ガチ☆ボーイ」公式サイト
■出演:佐藤隆太 サエコ 向井理 仲里依紗
宮川大輔 泉谷しげる
■監督:小泉徳宏
2008年3月1日~全国ロードショー |
(C)2008フジテレビジョン/ROBOT/東宝 |
|
雑誌「Quanto」2008年2月号掲載 |