知り合いのギャラリーから声を掛けていただいて、
人生初の陶芸をすることになりました。
陶芸は前から興味があったものの
さすがに敷居が高くて断念していたジャンルだったので、
これは本当にありがたいお誘いでした。
しかも、いきなり陶芸のグループ展に出品することになり、
材料や技術について教えて下さる先生まで紹介してもらって、
なんだか至れり尽くせりな展開に。
でもね、実際やりはじめてみると、
自分の思うようなカタチを作るのは容易な事ではなく、
そこから挫折と試練の日々が始まったのでした…
★ ★ ★
僕に陶芸を教えてくれたのは
陶芸作家のDAISAKさんという青年です。
彼は安斎肇さんが陶芸の展覧会をされた時にも
サポートされた作家さんで、
工芸的なジャンルに身を置きながらも
枠組みに縛られない自由人と言うか、
不良陶芸青年と言うか(←褒め言葉)
まぁそういう人だったから
なんでも我流でデタラメに突っ走ってしまう僕なんかでも
ドーンと受け入れてくれるので、
結果的にとても良い流れで
自分よりもずいぶん年の若い陶芸の師匠ができたのでした。
僕は昔から先生の言う事を聞かずに暴走するところがあって、
例えば美術学生時代に写真の授業があったのですが、
モノクロフィルムのプリントを習っていた時に
どうしても合成写真を作りたくなって、
(当時はまだデジカメやパソコンが普及していない時代)
現像したフィルムをカッターで切り抜いて
自分の顔写真と長靴の写真を組み合わせていたところ、
写真の先生に見られて「お、お前、何してるんだ!」と
驚かせ&呆れさせてしまった事があって…
…なんて話をDAISAK師匠にしたところ、師匠は
「あ、僕は学生時代、本焼きが終わった陶器に
ラッカースプレーを吹き付けて
先生にメッチャ怒られた事があります」
なんて言っていたので、
あぁ、これは頼もしいな、と(笑)、
不良先生にフルパワーでぶつかっていく事に決めたのでした。
★ ★ ★
…と、そこまでは、
新しい事が始まるワクワク感でいっぱいだったのですが、
えー… 繰り返し書きますが、世の中はそんなに甘いもんではなく、
実際に陶芸用粘土を触ってみると
これがねぇ、思うようにカタチにならないのです…
正直なところ、最初はちょっとお気楽な気持ちだったのです。僕は。
粘度素材で言うと、油粘土だったらずいぶん前から使っているし、
数年前からは瓦粘土を使った造形もしているし、
陶芸粘土もちょっと慣れたら
おそらくイイ感じでやっつけられるんじゃないか、と
気楽に思っていたのですよ。
しかし当然の事ながら造形の神様は
そんな舐めたヤツにはガッツリと試練を与えて下さるワケで(泣)
場面場面でいろんな失敗をしてしまうワケです。
とにかく、イチイチ失敗するのです。
僕がやろうとしていた事が
陶芸のセオリーを無視した事だったようなので、
失敗は試行錯誤の一環と考えたら仕方がないのですが、
でもやっぱり「土」だったり、
「水」だったり「重力」だったり、
とにかく、自然現象の前に簡単に屈してしまうのです。
でもちょっと待てよ、
俺だって造形の仕事を20年やってるんだぜ、
今まで様々な素材を扱ってきた俺が
今さらなんでこんな素朴な素材を
ねじ伏せられないんだ…って焦るんだけど、
自然の素材ってのはケミカル系の素材みたいに
素直に人間の言う事を聞いてくれないんですね…
これはねぇ、すごい敗北感ですよ。
無力なんですよ…自分が。
でもね、これが意外と気持ちが良い。
俺、今、生きてる… って感じ。(←なんだそれ)
★ ★ ★
そしてようやくこの辺で
自分の考え方が間違っている事に気付きはじめるワケです。
今回初めて気がついたのだけど、
僕は知らず知らずのうちに
モノ作りを「減点法」だと解釈していたようです。
発注された仕事の場合だと特にそうなのですが、
モノを作るという事は
まずは完成のクオリティイメージありきで、
それに対して作業中の微細な失敗をマイナスしながらも
限られた時間の中で
最終的にいかに高得点をキープできるか…みたいなものだと、
知らず知らずのうちに思っていたようなのです。
しかし、初挑戦の陶芸は全然違ってましたね。
陶芸初体験の僕なんかが
偉そうに語るのは恐れ多いのですが、
でも、造形の仕事を長くやってきて、なおかつ
陶芸に初挑戦した素人のシンプルな驚きとして言えることは、
陶芸ってのは、釉薬かけて1200℃ で焼いた結果は
神様にしか分からない、って事を受け入れて進める造形だってこと。
確かに、経験値によってだいたいの結果は
コントロールできるんだろうけど、
でも最終的には釉薬の反応によるハプニングや
偶然性までが加味されたり、
場合によっては窯の中で粉々に爆発してしまったり…
どんな結果が待っているか、
ササッとシミュレーションしてみたら
分かるようなものではなくて、
実際に手間暇かけて作ってみて
灼熱の窯に放り込んでみないと分からないんです…
最初のうちは、この感覚を持ちながら作業を進めるのは
本当に大きなストレスでした。
しかし、一旦心を開いて受け入れてみると、
これがとても新鮮で面白い。
そういえば、勝新太郎の名言に
「偶然完全」というのがあって、それは確か、
「テクニックで生まれる完全などない。
完全なんて偶然からしか生まれない」
というような意味だったと思うのだけど、
なんかその言葉の重みを感じましたね…
思い返してみると、やっぱり僕は、
造形ってのは予定調和の完成イメージに向かって
道具を服従させ、素材をねじ伏せて進めるものだと、
無意識に思っていたのかもしれません…
さて、そこからはバガボンドの宮本武蔵のごとく(笑)
自然を受け入れ、あるがままに…
って、そんな難しい事はなかなかできないのだけど、
まぁ、そんなふうにできたらいいなぁと、思いながら
一つ一つカタチにしていきました。
というワケで完成画像です。
(クリックで拡大できます)
こんな感じで作りました。
途中いろいろあったけど、なんとかこんな感じで…
★ ★ ★
陶芸のグループ展 Trancepop Presents「Ceramic Party」は
11月19日(水)から12月14日(日)まで、
京都・トランスポップギャラリーにて開催されます。
(今回、画像で紹介した作品はすべて販売いたします)
参加されるのは
朝倉世界一さん、小田島等さん、かせきさいだぁさん、
逆柱いみりさん、白根ゆたんぽさん、(五十音順)
そして僕です。
まぁ、今回のは直接カミロボとは関係ないのですが、
一人の人間がやっていることは
どこかで地続きだったりするので
ご紹介させていただきました。
…もしや、これがカミロボ居酒屋トークで
S氏が言ってた「安居智博=カミロボ説」って事か…?
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